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「諸国大名は弓矢で殺す、ユーロファイターは目で殺す」
(それ意味違う)
ユーロファイター・タイフーンは、イギリス・ドイツ・イタリア・スペインの共同開発で作られた超音速戦闘機です。
1980年代以降の技術で作られた「第4世代戦闘機」に分類され、同世代としてはアメリカのF/A-22「ラプター」・F-35、フランスのラファール、スウェーデンのJAS39「グリペン」等が挙げられます。ロシアは…どれだ?なんせ輸出仕様の方がロシア空軍より高性能だったりする現状だし。
<開発経緯>これがまたこんがらがったお話で。
大元の開発が始まったのは1970年代後半。アメリカがフライ・バイ・ワイヤ機F-16・F/A-18を採用する一方で、ソ連がこの2機種及びF-15と互角以上に戦える戦闘機を開発しているという情報が流れた時代です。近年の航空機開発はやたら金がかかるので、イギリス・フランス・(西)ドイツの共同で行うことに。これはECA(European Combat Aircraft)計画と呼ばれ、1987年の就役を目標としていました。
ところがフランスは「空母からも発進できるようにしてくれ」と激しく主張。「んな事したらあんまり大きな機体作れんやんけ」と英独二国が激しく反発。とうとうフランスは「じゃあいーよもう。俺、勝手に作るから」と1985年、ECA計画から脱退。やや小ぶりながら空母発進可能なラファールを独自開発します。…あれ?最初の就役予定まであと2年。まだ試作機すら飛んでない。
替わりに「俺達もこの計画に混ぜて〜」とイタリアとスペインが参加表明。1986年にこの新型機を開発する共同組織「ユーロファイターGmbH」を作ります。この時計画名はFEFA(Future European Fighter Aircraft)に替わりました。ところがイタリアが「それウチの言葉じゃ放送禁止用語!」とクレーム付けて、Futureが取れたEFAに替わります。そりゃ誰だって「○○○○」なんて名前の最新鋭戦闘機作りたくねーよ。目標は1992年就役。
計画を進めていた1980年代後半、世界は大きく変わっていきます。仮想敵国だった東欧各国が次々と民主化。挙句にはアカの大親分ソ連崩壊。
西ドイツに至っては、長年敵だ敵だと思っていた東ドイツとついに合併。「東側の復興に金がいるんだよ。そもそもこれじゃもう、この戦闘機誰と戦わせるねん」と統一ドイツが文句を言い出し、計画中止の声も上がりました。
そこで1992年(おい、就役してる予定の年だぞもう)、計画を見直し2000年就役を目指した「Eurofighter 2000」計画となりました。最終的に各国の要求仕様がまとまったのは1994年。
もうここまで来るとみんな、「出るまでがユーロファイターです」と某SN○WやL○VERS発売を待つみたいな態度を取るようになってます。もう冷戦終わってるし。
1998年には「”ユーロファイター”って名前だと、他の国買ってくれないんじゃないか?21世紀になって2000、2000言うのも恥ずかしいし」と言う事で輸出用に「Typhoon」という名前が付きます。前に共同開発した機体が「トーネード」。あんまり飛びたくない名前だなぁ。
名前が決まった理由としては、この4ヶ国の言語でどれも似たような発音だという事もあるようで。ドイツ語「Taifun」イタリア語「Tifone(ティフォーネ)」スペイン語「Tifone(ティフォン。アンリミテッドサガのあいつ)」まあ、ヨーロッパにもともと台風来ないから中国・日本あたりからの外来語な訳で。「ツナミ」みたいな。
その後も航空ショーでロシアのフランカーやフランスのラファールが派手な機動を見せつける中、ポツンと木製実物大模型(モックアップ)展示するだけなんて事もあったり、あまり順調に開発が進んだという訳ではないようで。共同開発のサガでしょうか。
やっぱり計画通りに2000年に就役できる訳がなく、量産型が各国に引き渡されたのは2003年。実戦配備は現在進行形。そりゃあ確かに「最新鋭戦闘機」だ…いーのかそれで?
まあ冷戦終わってるしフセインタイーホされたし。
<機体構成>
機体形状は基本的に「前翼(カナード)付き無尾翼デルタ」となっています。フランスのラファール・スウェーデンのグリペンも同じ形をしており、なんか西側欧州の流行りのようです。似たような形としては、グリペンの先代だったビゲン戦闘機や某空戦漫画で有名(日本オンリー)になったイスラエルのクフィル・南アフリカのチーターがありますが、これら「第3世代戦闘機」のカナードが「渦を発生させて主翼と干渉させ、より大きな揚力を得る」事を目的とした固定式だったのに対し、タイフーンその他のカナードはフル稼動(しかも左右独立)して積極的に機動に利用されます。
こういう機体の操縦は「操縦桿を右に倒せばラダー右に動いて〜、前に倒せばエレベータ下がって〜」といった単純な機械リンクでは不可能でした。
タイフーンだけでなく、F-16以降の多くの機体がフライ・バイ・ワイヤ(FBW)システムを採用しています。機体の現在の姿勢・気流データと操縦士の入力から最適な舵角を機内のコンピュータが計算し、全ての舵(とエンジン出力)をリアルタイムで制御します。操縦士の手元にある操縦桿・ペダル・レバーは全部タダのスイッチ。ゲーセンの筐体を無茶苦茶高級にしたようなもんです。プレステのボタンの数なら、コクピットに繋げてもある程度は飛ばせるんじゃないでしょーか。
機動性を得る為に、機体の形は「力学的に真っ直ぐ飛ぶようには作ってない」。ぶっちゃけコンピュータが止まったら、あっけなく墜ちます。そんな訳でタイフーンのFBWは4重に組まれてます。ユーロファイター社曰く「ケアフリー・ハンドリング」。操縦士は機体の限界を考えて操縦をセーブする必要はなく、戦闘に集中していればよろしい。操縦士がどんな入力をしても、タイフーンの機体は自分の限界を考えた最適の機動を取ります。
翼の可動部分は、カナード全体、主翼前縁、後縁、垂直尾翼後縁のラダーとなっています。後縁の可動部分(「フラップ」+「エルロン」=「フラッペロン」。なんかカキ氷食いながら麻雀うってそう)は胴体側と翼端側に2分割されています。
機首上げ・機首下げ(ピッチ)にはカナードとフラッペロン(左右同相)、
機首右向け・左向け(ヨー)にはラダー、
前後軸周りの右転・左転(ロール)にはカナードとフラッペロン(左右逆相)を用います。
主翼前縁は低速大仰角時に下がり、失速を防ぎます。
また他の可動部分としては、風防後ろにエアブレーキがあり、上げる事で空気抵抗により機体は減速します。
エンジンはユーロジェット社開発EJ200ターボファンを双発。一基で最大出力60kN、アフターバーナー使用時には5割増しの90kNを搾り出します。燃料・吸入空気量その他はデジタル完全自動制御(FADEC)。
ピンと来ない方に説明しますと、F-15CイーグルのF100-PW-200エンジンが最大出力65kN、A/B使用時で106kNです。もっともF-15Cの自重は12,790kgなのに対し、タイフーンの自重は9,750kgと軽いので推力/重量比はタイフーンの方が上。さらに今後はより強力な新型エンジンの搭載も予定されています。
統一後のドイツでは、元西側で使ってたF-4ファントムより上昇性能がいいので元東側のMiG-29ファルクラムを迎撃任務に使用していましたが、そのMiG-29と編隊機動を行った際「MiG-29はA/B使わなきゃできないようなループ(宙返り)にタイフーンはA/B無しで楽々とついて行きやがる」と周囲を驚かせました。
「A/B無しでも超音速巡航ができる」という話もありますが、この件については良く分かりません。
搭載するユーロレーダー社開発「キャプター」レーダーはF/A-22や日本のF-2、MiG-31などが積んでいる最新のフェイズド・アレーではなく、アンテナは従来からの機械作動式ですが、戦闘機サイズ(非ステルス)の目標を160kmで探知、その距離で20個の目標を同時追跡したという試験報告があります。
またタイフーンはレーダー以外の探知手段として、赤外線センサー「PIRATE(Passive Infra-Red Airborne Track Equipment)」を搭載しています。逆探のおそれがない赤外線センサーは天候の影響を大きく受ける欠点がありますが、PIRATEは条件が良ければ145km先の目標を探知可能なようです。
タイフーンの特徴の一つとして、ヘルメット・マウンテッド・サイト(HMS)の着用が当初から予定されていた事が挙げられるでしょうか。
コクピット前方に従来からあるHUD(Head-Up display)は周囲の風景に表示画像を投影できますが、ディスプレイを張った前面しか見せません。よく映画で敵機にミサイルロックするシーンがありますが、あれをやるには敵機に機体を向けなければならない。360度から来る相手にはどう対処するか。
νガンダムかサザビーみたいに全方位コクピットにするのも一つの手でしょうが、今の技術じゃあまりにもアレ。
どうせ見るのに使うのは目玉だけ。そして戦闘機パイロットはずっと透明カバー付きのヘルメットをかぶっている。
だったらこうしてしまえば良いではないか。
タイフーン操縦士が着用する「Striker」HMSはタイフーン自体の火器管制装置と連動しています。ドッグファイトに入った際、操縦士は必ずしも機体を目標に真っ直ぐ向ける必要はありません。目標のいる方に首をむければレーダーおよびPIRATEがその目標を自動的にロック。発射されたミサイルはすぐに軌道を変え、目標に向かいタイフーンから離れていきます。
近年開発が進んだ高機動空対空ミサイルは、HMSと共に使う事で初めてその真価を発揮できると言えるでしょう。
さすがにガン(米軍機に多いバルカンではなく、単砲身のマウザー社製27mm)を使う時は目標に正確に真っ直ぐ向く必要があるでしょうが。
なんでHUDに比べこのHMSの採用が遅れたかというと、装置の軽量化がネックだったんですね。地上で1kgだとしても、ドッグファイト中に7Gの機動なんかしたら首には7kg。
「ドラゴンボール」のスカウターがあんなに小型軽量なのは、奴らの運動能力から決まったんじゃないでしょうか。多分試作の最中には、フリーザの手下何人か首折れたと思います。
<タイフーン最初の対戦相手>
実戦配備される前に、タイフーンは伝説的な勝負をしました。相手は「地上最速の男」ミハイル・シューマッハ。
2003年12月11日、イタリア政府はバッカリーニ空港でこの最新鋭戦闘機のデモンストレーションを開催。シューマッハが乗るのは当然F1マシン「フェラーリFA2003-GA」。「飛行機だって滑走中は自動車なのだ!by田宮先輩」直線3本勝負。
1本目、距離600m。シューマッハ9秒4。タイフーン9秒6。フェラーリのダッシュ力は伊達じゃない。
2本目、距離1200m。シューマッハ16秒7。タイフーン14秒2。
決勝戦、距離900m。……シューマッハ13秒2。タイフーン13秒フラット。
タイフーン、最初の勝利。相手はフェラーリ。
「飛行機が車に勝って嬉しいか」という声が聞こえてきそうですが、嬉しいんです。
イタリア空軍は1981年、F-104スターファイター戦闘機で故ジル・ビルヌーブ操るフェラーリ126Ckと0-1000m直線勝負やって負けた因縁があるんですから。
<機体データ>
全長:15.96m
全幅:10.95m(翼端ポッド含む)
全高:5.28m
主翼面積:50.0m^2
自重:9,750kg
運用重量:15,550kg
最大離陸重量:21,000kg
エンジン:ユーロジェットEJ200(ドライ時60kN、A/B使用時90kN)×2
機内燃料重量:4,500kg
最大速度:2,390 km/h
戦闘行動半径:1,350km
(空対空ミサイル6発装備で10分間の戦闘空中哨戒時)
固定武装:マウザーBK27mm
乗員:1名
参考文献:「戦闘機年鑑 2005-2006」(イカロス出版)その他
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